内接円」や「内心」という用語は現在の中学の教科書には出てきませんが、三角形の角の二等分線は1点で交わるという証明は現在、中学2年生の教科書(東書その他)にあります。
内接円、内心について

それぞれの角の二等分線は1点でまじわり、
点Dを中心に円を書くと…
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Dを中心に三角形の3つの辺に接する
 円を書くことができます。この円を
内接円といい、中心を内心といいます。

下の「定理8」は三角形の3つの角の二等分線は1点で交わること
の証明ですが、その証明方法をはじめてみる方にとっては、「へぇ〜
垂線か」と思われるかもしれませんが、「角の二等分線」が「各辺から
の距離が等しい点の集まり(軌跡)」と考えると自然かもしれません。

 [定理8]
三角形の3つの角の二等分線は1点で交わる
 
△ABCの∠Bと∠Cの二等分線の交点をDとすると線分ADは
∠Aを2等分することを証明する。


 
[定理8の証明]
  
 点Dより各辺に垂線をおろし図↓の
ようにP,Q,Rとする△PBDと△QBDにおいて
BD共通、∠PBD=∠QBD、∠BPD=∠BQD=90
斜辺と1鋭角が等しいので△PBD≡△QBD から
 PD=DQ、同様にして △DQC≡△DRC から
 DQ=DR、よって、PD=DR   以上から、
 △APDと△ARDにおいて
 斜辺と他の1辺が等しいことから、
△APD≡△ARD よって、∠PAD=∠RAD



【内心の角度の関係】
 
三角形の内角の和より
 2a+2b+2c=180
   よって、
 a+b+c=90
   の関係があります。



  
基本問題(内心をDとする)

【 問題1】


答え X=35

【問題2】


答え X=84
 
【問題3】


答え X=134
[定理9]
  
△ABCの内部の点Dは
  ∠BAD=a ∠DCB=d
  ∠ABD=∠DBC=b として
  a+b+d=90 を満たすとき、

  点Dは内接円の中心(内心)
  であることを証明せよ。

 


[定理9の証明その1]
  
  △ABCの外接円とBD,CDの
 延長線の交点をE,Fとし、ADとFE
 の交点をGとする。円周角より、
 ∠FAB=∠FCB=d
 ∠EBC=∠EFC= b
 =∠ABE=∠AFE
 △AFGにおいて、
 ∠BAD+∠AFG+∠FAB=
 a+b+d=90 
 よって、∠AGF=90これから
 △AFG≡△DFG がなりたち、
 四角形AFDEはタコ型になり、
  ∠AEF=∠FEB=d
  円周角から、
 ∠ACD=∠AEF=d 



[定理9の証明その2]
  
  a<d のとき
  △ABDをBDで折り返して A→Eとして
  BDとAEの  交点をFとすると、
  △ABE及び△ADEはBFを対称軸とする
  二等辺三角形で、BF⊥AE、
  ∠ADF=a+b=90−d  (仮定より)
  △ADFの内角から、∠DAF=d がわかる。
  ∠DAF=∠DCB=dから、 四角形ADCEは
  円に内接するので、∠ACD=∠AED=d

  a=d のとき…略
[ 問題 ]

[問題1]

  ↓の図で
  a+b+c=90 を満たすとき、
  点Dは内心であることを証明せよ。



[問題2]

  ↓の図で
  a+b+c=90 
∠ABC≠∠ACB
  を満たすとき、
  点Dは内心であることを証明せよ。


 

 [問題3]

 ↓図の△ABCにおいて、∠Aの二等分線とこの三角形の外接円との交点をDとする、同様に、∠B、∠Cの二等分線とこの外接円との交点をそれぞれE,Fとし角の二等分線の交点をIとする。このときEB⊥FD、FC⊥ED、、AD⊥EFを証明しなさい。(△EFDの垂心は点Iであることの証明です)



 この問題は2007年の京都大学の理系問題です。少しアレンジしていますが、内容はあまり変わりません。